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夏休みの思い出…器具や薬のない医者は無力?!

 先日夏休みを利用して、家族で北海道旅行をしたときのことである。

 旅行の最中は、体調不良になることも考え、最低限の『風邪薬』程度はもって歩くことにしているが・・・(今回の旅行は我が輩の友人(医師)のところを訪ねることもあり、何かあったら借りればいいや!と思って診察器具は持ち合わせていなかった。)

 北海道(函館)を離れ、青森に向かいフェリーの中のことである。

 港を出航後、1時間半位すぎたあたりである

 船内放送が突如鳴り響いた

『ただいま、船内で急病人が発生致しました。お客様の中で、お医者様か看護師さんのかたはおられませんか?おられましたら・・・』

 あ、ちゃぁ~

 誰か知っている人、居ないかな?って、おい!我が輩、医者じゃん!(^ ^;)

 専門外だったらどうしようか?との不安もあったが、とにかくフェリースタッフの元へ・・・

「あの~、岩手で小児科医しているモノですが・・・急病人て、どんな感じ?専門外なら自信ないけど・・・」

 といってみると、スタッフの方に案外広い1等船室まで案内された(我が輩たちは二等船室で雑魚寝していたんだけど)・・・

 ベットに寝かされていたのは、子供であった。(良かった、専門外じゃなくて!)…で、近くに寄ってみると・・・

『痙攣!・・・しかも体温が高い・・・熱が・・・38.7度』

 そう、熱性痙攣だったのである。意識はなく、呼吸が速く唸っている。発症当時は口唇が紫色(チアノーゼ)があったとのことだが、我が輩が見たときには消失していた。

 その周りには、祖父母と妹がオロオロして心配そうに見守っている。

 こりゃ、心配するわけだ・・・つぶっている患児の目を見てみると、焦点が合わず上向きになりゆっくりと左右に振れるのみ・・・体は小刻みに震えながら硬直している・・・呼吸もあえぐような呼吸である

 とりあえず、我が輩の素性を名乗って、とにかく何か体を冷やすモノで冷却して、衣服をゆるめて・・・まではフェリースタッフがしてくれていた。

 ここからが問題である。手元に診察器具も、痙攣を止める薬剤はない。(抗けいれん剤はうちの子供たちが、熱性痙攣をおこさないから持ち歩く習慣がなかったのだ(失念)。)

 手早く診察し、診察器具になり得るようなモノ、使えそうな薬剤(解熱剤の座薬)などを家族・スタッフに用意して頂く・・・妹の解熱剤があったのでこれを流用。他にあったのは懐中電灯と血圧計のみ…

 フェリースタッフに常備薬などはないか?と尋ねるが、運悪く短距離航路のため、常備薬もないとのこと。

 10分以内に治まるのが多い熱性痙攣。しかしよくよく発症の時間を聞いてみると、フェリースタッフを祖父母が呼んだのが船内放送の約5分前、わが輩が呼ばれて、いや出頭して、診察、あれこれの指示などして経過見ること10分。発症後すぐと考えても、痙攣は治まる様子がない・・・

『ここまで痙攣持続15分・…20分以上になる場合、痙攣重積発作として一刻も早く抗けいれん薬を使用して止めないと、脳神経に障害が起こることがある…ここは洋上・・・救急ヘリを要請したところで、何分で到着するだろうか?』

 心の葛藤が続くと言いたいところだが、葛藤している暇はない。

「船長に連絡!救急ヘリを要請して何分で到着するか聴いて!このまま続く場合、救急搬送の必要がある、急げ!」(フェリースタッフさん、命令口調でごめんなさい)

 まもなく、船長が船室に来室したので、事情を説明。ここまで痙攣20分持続…海上保安庁に連絡して、救急ヘリを要請して頂くこととなった。

そして、船長が電話?でフェリー会社経由で海上保安庁と連絡を取ってもらっている間に、痙攣が止まり、意識回復(持続25分・・・長かった・・・・)。対光反射も両側で迅速にあり、会話も可能になる。

 とりあえず一段落。

 ここからどうする・・・救急ヘリを飛ばしてもらって、搬送までに何分かかる?船の入港とあまり変わらないか?

 痙攣消失し、意識回復したので、経過を船長に報告・ついでに海上保安庁(函館)の係官に報告(緊張しました)しました。

「患者の様態は、ついさっき痙攣消失し安定したところです。今すぐの搬送よりは安静にして、もうしばらく経過観察が必要。痙攣の再発が見られる場合には救急ヘリでの搬送が必要ですので待機をお願いします。」と

 あとで分かったことですが、要請からヘリの離陸まで最低5分、函館側から船まで15分程度はかかるとのこと、それから搬送先の病院まではヘリポートのある病院(青森側)を探すので・・・と考えると、入港まであと約1時間30分。40~50分くらいしか変わらない・・・

 フェリーは全速で青森に向かって頂くこととして、我が輩は患児の経過観察。海上保安庁の救急ヘリ隊の方には、容態悪化の場合にすぐに離陸できる体制で待機して頂きました。ついでに青森側で、このまま何もなければ、救急病院で一度きちんとした診察を受けるように救急車・救急病院を手配して頂いた。

 その後の約1時間、様態見ながら祖父母への問診と、熱性痙攣が初めてであったとのことで一般的な熱性痙攣についての説明および、痙攣が長いため精密検査の必要も説き、救急病院宛に経過のメモ兼紹介状を作成で費やした。幸いにもその後の痙攣の再発認めず、何事もなかったように船は青森フェリー埠頭へ着岸となった。

 到着後、一番に下船となり、待機して頂いた救急隊の元へ患児を引き渡し、経過報告の上、紹介状を持って青森市内への救急病院への搬送となった。

 …数日後…主治医の先生からその後の経過について、ご丁寧なご報告を頂き、痙攣の再発はなく、現在加療中とのことであった。

 日頃、診察・処置の器具、薬剤に囲まれて診療している事に慣れていると、こういったせっぱ詰まった状況の際には、何もできないことが多く

 『無力だ!』『情けない!』

 と痛感した。この度の事を教訓に、院内の常備薬および診察器具を旅行中は携帯することに習慣つけたいと思う夏休みであった。

P.S.東日本フェリーの船長を始め、客室乗務員・車両管理スタッフ、および海上保安庁の係員の方・救急ヘリスタッフ、救急隊の皆様の協力に、感謝とともに御礼申し上げます。

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